自筆証書遺言の作成方法
「自筆証書遺言」(じひつしょうしょいごん)とは、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。
ここでは、自筆証書遺言を書く際に問題となりやすい場所を一緒に見ていきましょう。
遺言の表現
遺言者が全文を自筆で記載し、遺言書の意味内容が正確に理解できればよいので、どのような表現によっても差し支えありません。
たとえば、英語や中国語、略語や速記などによっても問題ありません。
機械を使うのは?
ワープロやタイプライター、点字機を使うことは許されません。
本当に本人が作成したかを判定するのが難しく、勝手に書き換えらてしまう危険も多いからです。
また、編集のおそれがあることから、テープレコーダーに声を吹き込む方法も認められていません。
他人に添え手をしてもらうのは?
他人が書いた場合はもちろん、他人に口授筆記させたときも無効とされています。
添え手については、下記のような裁判所の先例があります。
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自筆証書遺言の本質的要件ともいうべき「自書」の要件については厳格な解釈を必要とする。
遺言者が証書作成時に自書能力を有し、他人の添え手が、単に始筆、改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添えてをした他人から単に筆記を容易にするために支えを借りただけであり、かつ、添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡の上で判定できる場合には、「自書」の要件を満たすものとして有効であると解するのが相当である。
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簡単にいうと、
「自書」は自筆証書遺言にとって命のようなものだから、厳しく判断しますよ。
添え手はあくまで物理的な支えでしかなく、遺言者が自分で書いたと遺言書を見ただけでわかる場合に限って添え手を使っても「自書」といえますよ。
ということです。
日付は?
日付は、遺言者に遺言をする時点で遺言をする能力があるかどうかや遺言が複数ある場合にどちらが先かを判断するために必要ですから、その作成年月日が明確でなければなりません。
例えば、単に「某月 吉日」とのみ記載してある場合や「月の綺麗な季節にて」などでは作成年月日を特定できないため、遺言書は無効となります。
ただし、必ずしも正確な暦日でなければならないというわけではなく、「還暦祝賀の日」など作成日が特定できるものであれば差支えありません。
また、封筒に日付を自書した場合でも、作成日を特定できることに変わりないため差支えありません。
氏名の自書は?
氏名の自書は遺言書を作成した人が誰かを特定するためのものですから、単に氏だけ又はなだけを自書した場合はもちろん、ペンネームなどであっても本人の同一性が認識できるならば差支えありません。
ただ、全く氏名のないものは筆跡から本人が特定できたとしても有効とすることはできません。
印の種類は?
印は必ずしも実印である必要はなく、認印や 指印でも差し支えありません。
また、1通の遺言書が数葉にわたる場合に、契印・編綴がなくても、その数葉が1通の遺言書として作成されたものであることが確認できれば問題ありません。
遺言書の作成 関連項目
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